毎年夏になると多くの人が感じるこれらの「夏バテ」症状。
「暑いから仕方ない」「年齢のせいかな」などと片付けられがちですが、実はその背後には、深部体温(身体の中心温度)の異常上昇が関係している可能性が高いのです。
この記事では、深部体温と夏バテの因果関係、そして深部体温を適切にコントロールすることで得られる夏バテ対策について、科学的なエビデンスに基づいて解説します。
🔍 追記:本記事は「深部体温」にフォーカスしています
夏バテの原因は多岐にわたります。自律神経の乱れ、栄養バランスの偏り、冷房の効いた室内と外気温の差、睡眠不足など、さまざまな要因が複合的に関与しています。
本記事ではこれらの要因のうち、「深部体温(core temperature)」の上昇に着目し、特にスポーツ時のパフォーマンス低下や日常生活への影響について掘り下げて解説します。
🌡️ 深部体温とは何か?
深部体温(core body temperature)とは、脳や内臓といった身体の中心部の温度のことを指します。
通常、ヒトの深部体温はおよそ36.5~37.5℃の範囲に厳密に保たれており、自律神経やホルモンによってコントロールされています。
この深部体温は、代謝や循環、睡眠、免疫、消化など、あらゆる生理機能に密接に関係しており、わずか0.5℃程度の変化でもパフォーマンスや体調に大きな影響を与えます。
🥵 深部体温の上昇が引き起こす「夏バテ」症状
外気温が高い真夏、身体は深部体温を上げすぎないように汗をかいて放熱しようとします。
しかし、連日の暑さや高湿度、熱帯夜などで放熱が追いつかなくなると、深部体温が慢性的に高い状態になってしまいます。
この深部体温の異常上昇が、以下のような夏バテ症状の引き金になります:
- 食欲低下:胃腸への血流が減り、消化機能が低下
- だるさ・倦怠感:自律神経の乱れによる疲労蓄積
- 睡眠の質の低下:深部体温が下がらず、入眠障害・中途覚醒
- 集中力低下:脳の温度上昇によるパフォーマンス低下
つまり夏バテとは単なる暑さによる消耗ではなく、深部体温が恒常的に高いことで起こる全身性の機能低下と捉えることができます。
📚 深部体温と夏バテの因果関係に関するエビデンス
以下のような研究が、深部体温の上昇と夏バテ様症状の関係を支持しています:
- 東京大学の研究(2006)
高温環境下での深部体温の上昇が、胃腸の血流減少と食欲低下を引き起こすことをラット実験で確認 - 厚生労働省の調査
夏季の倦怠感・頭重感などの主観症状が、夜間の深部体温の低下不足(≒熱放散不足)と有意な相関を示す - 早稲田大学スポーツ科学研究科(2014)
室温35℃の環境での連日トレーニングにより、安静時深部体温が持続的に上昇し、自律神経活動が低下したと報告
これらは深部体温の上昇が単に不快なだけでなく、生理的ストレスとして夏バテ症状を悪化させることを示唆しています。
❄️ 深部体温を下げる対策=夏バテ予防
深部体温が上がることが夏バテの本質的要因だとすれば、それを下げる(=コントロールする)ことで症状を予防・緩和できると考えられます。
有効な方法としては、以下のようなものがあります:
- 冷水浴・足湯: 15〜20℃の水で手足を冷やすことで、末梢血管から熱放散を促す
- 冷却ベストやアイススラリー: 運動前後に用いることで深部体温の上昇を抑える(スポーツ科学で実証多数)
- 熱伝導率の高い寝具: 冷却ジェルパッドや通気性マットを使い、夜間の体温低下を促す
- 入浴と就寝時間の工夫: 寝る90分前のぬるめ入浴(38〜40℃)で一時的に深部体温を上げ、その後の下降を利用して入眠を促進
いずれも目的は「深部体温を一時的または慢性的に下げる」ことです。
単なる涼しさや体感温度とは異なる、生理学的なアプローチが必要です。
📝 追記:深部体温以外の夏バテ要因もあるが…
もちろん、夏バテの要因は深部体温の上昇だけではありません。
- 水分・ミネラル不足
- 睡眠不足
- 自律神経の乱れ
- 紫外線による活性酸素ストレス
- 冷房による温度差ストレス
こうした複数の要因が複雑に絡み合って「夏バテ」という状態が起きています。
ただ、本記事ではあくまで「深部体温の上昇」の影響と対策にフォーカスしました。
🗣️ おわりに
「暑いから仕方ない」と諦めてしまいがちな夏バテですが、その裏には明確な生理学的メカニズム=深部体温の上昇があります。
理解して対策すれば、夏でも快適に過ごすことは十分に可能です。
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