現代の生活は、LED照明やスマートフォン、パソコンなど、ブルーライトを発する光源に囲まれています。特に夜間におけるブルーライトの曝露は、体内時計を狂わせ、睡眠の質を低下させるといわれています。
ブルーライトが睡眠に与える影響とは?
ブルーライトとは、波長が約380〜500nmの短波長の光で、強いエネルギーを持つ可視光線です。自然界では太陽光に多く含まれ、日中の活動をサポートする一方で、夜間に過剰に浴びると生体リズムに悪影響を及ぼすことが知られています。
そのメカニズムの中心にあるのがメラトニンというホルモンです。メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、暗くなると分泌され、眠気を誘発します。しかし、ブルーライトはこのメラトニンの分泌を抑制する作用があり、結果的に入眠が遅れたり、睡眠の質が低下する原因になります。
科学的な裏付け
複数の研究で、ブルーライトの曝露がメラトニンの分泌に与える影響が示されています。
- ハーバード大学の研究(2013)では、ブルーライトを6.5時間浴びた被験者は、グリーンライトを浴びた被験者に比べてメラトニンの分泌が約2倍も抑制されたと報告されています。
- また、2019年の系統的レビュー(Sletten et al., Journal of Pineal Research)では、夜間のスクリーン曝露による睡眠遅延や眠りの質の低下が統計的に認められるとされました。
このように、夜間のブルーライト曝露がメラトニン分泌にマイナスの影響を与えるという知見は、医学的にも広く認知されています。
完全な排除は難しい現代生活
私たちの暮らしにおいて、ブルーライトを完全に避けるのは現実的ではありません。室内照明はLEDが主流となり、スマートフォンやパソコンは日常的に使用され、夜でも明るい環境に慣れてしまっています。
では、私たちはどうやってこの影響を最小限に抑えることができるのでしょうか?
対策①:日常生活の工夫
- 就寝1〜2時間前にデジタル機器の使用を控える
- スマホやPCに「ナイトモード」を活用(ブルーライトカット)
- 照明を暖色系のLEDに変更
- ブルーライトカット眼鏡の活用
これらの工夫でブルーライトの影響をある程度軽減することが可能です。
対策②:メラトニンをサポートする食事や栄養素
● トリプトファン
メラトニンは、体内でセロトニンを経て生成されます。このセロトニンの材料となるのがトリプトファンというアミノ酸です。
トリプトファンを多く含む食品:
- 大豆製品(豆腐、納豆)
- 牛乳・チーズ・ヨーグルト
- バナナ
- 鶏むね肉
- ナッツ類(アーモンド、くるみ)
● ビタミンB6・マグネシウム
トリプトファンからセロトニン、そしてメラトニンへと変換される過程では、ビタミンB6やマグネシウムが補酵素として関与します。
- ビタミンB6:まぐろ、にんにく、バナナ、さつまいも
- マグネシウム:ほうれん草、アーモンド、玄米
対策③:サプリメントの活用(注意点あり)
日本ではメラトニンは医薬品扱いとなっており、個人輸入などを除き、通常のサプリメントとして入手することはできません。しかし、トリプトファンやグリシン、L-テアニンなど、メラトニンの前駆体や睡眠補助に役立つ成分を含んだサプリメントは市販されています。
一部の国では、メラトニンを直接摂取できるサプリメントが市販されています。しかし、日本国内ではメラトニンは医薬品扱いとなっており、原則としてサプリメントとしての販売・摂取は認可されていません。
代わりに、日本で販売されているのは以下のような補助的なサプリメントです:
● トリプトファン・GABA・テアニン配合
- トリプトファン:メラトニン生成を間接的にサポート
- GABA:リラックス効果を高める
- テアニン:お茶に含まれる成分で、緊張を和らげる作用があるとされる
● 注意点
この記事は医療行為や服薬指導を目的としたものではありません。サプリメントの使用については、体調や薬の服用状況により医師や薬剤師に相談されることをおすすめします。
サプリメントはあくまで「食品」であり、効果を断定的に述べることはできません。睡眠改善の一助として、自己責任の範囲で活用するのが望ましいでしょう。
まとめ:光とうまく付き合う暮らしへ
ブルーライトは悪者ではなく、使い方次第で味方にもなりえます。日中に浴びるブルーライトは覚醒を促し、気分を明るくしてくれます。重要なのは「夜間に余計なブルーライトを避けること」。
食事、生活習慣、サプリメントなどの工夫で、現代の光と上手に付き合い、心地よい睡眠を手に入れましょう。
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