睡眠と寝つきに良いと言われるバレリアンの効果とエビデンス──カモミール・ラベンダーとの比較

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「なかなか寝つけない」「夜中に目が覚めてしまう」──そんなときに注目されるのが、自然由来のハーブティーです。なかでもバレリアン(Valeriana officinalis)は、ヨーロッパで古くから「天然の安眠ハーブ」として利用されてきました。
本記事では、バレリアンハーブティーの効果やエビデンスを科学的に整理し、同じく人気のあるカモミールやラベンダーとの違いも比較。さらに効果的な飲み方や安全性についても詳しく解説します。


バレリアンとは?

バレリアンはヨーロッパ原産の多年草で、主に根の部分を利用します。
独特の土っぽい香りが特徴で、人によっては「飲みにくい」と感じることもありますが、その独特の香り成分が神経を落ち着かせる働きを持つとされています。
伝統的には不眠や神経性の緊張を和らげる目的でハーブティーやサプリメント、チンキとして摂取されてきました。


バレリアンの研究エビデンス

バレリアンは「効く」という研究と「効果がない」という研究が混在しており、結果は一貫していません。代表的な研究を時系列にまとめます。

  • Balderer & Borbély (1985)
    健康成人128人にバレリアン抽出物を投与した結果、入眠時間が短縮したと報告されました。ただし主観的評価が中心で、小規模試験にとどまります。
  • Leathwood & Chauffard (1985)
    軽度不眠症患者を対象に400mgを投与。入眠までの時間が有意に短縮しましたが、睡眠の深さや全体的な質には明確な改善は見られませんでした。
  • Bent et al. (2006, メタ解析16試験)
    16件・1093人の試験を統合した結果、入眠改善の傾向はあるものの結果はバラバラで、プラセボとの差ははっきりしませんでした。
  • Miyasaka et al. (2006, 系統的レビュー)
    不眠や不安症の患者を対象とした複数の研究を分析したところ、一定の効果は示唆されたものの、研究の質が低く結論づけには至らないと報告されました。

まとめ: バレリアンは「寝つきの悪さを改善する可能性」がある一方で、効果は個人差が大きく、誰にでも有効とは言えません。


バレリアン・カモミール・ラベンダーの違い

安眠やリラックスを目的とするハーブとしてよく比較されるのが、バレリアン・カモミール・ラベンダーです。それぞれの特徴を解説します。

バレリアン:
バレレン酸やギ酸バレレナートなどが含まれ、GABAの働きをサポートすると考えられています。入眠を早める効果が示された研究もありますが、結果に一貫性はありません。単独では香りにクセがあるため、他のハーブとブレンドされることが多いです。

カモミール:
アピゲニンという成分がGABA受容体に作用すると考えられています。2009年の研究では、不安症患者に有効性が確認され、睡眠改善にも役立つことが示唆されました。リンゴのような香りで飲みやすく、睡眠だけでなく胃腸の調子を整える効果も期待できます。

ラベンダー:
主成分はリナロールや酢酸リナリルで、自律神経を鎮める作用を持ちます。2010年の研究ではラベンダーオイルが不安軽減に有効で、芳香療法でも入眠改善効果が確認されています。香りのリラックス効果が強く、ハーブティーよりもアロマやサプリとして使われることが多いです。

比較ポイント:
– バレリアンは「寝つきを改善したい人」に向く
– カモミールは「飲みやすく、安眠+胃腸ケア」に向く
– ラベンダーは「香りによるリラックス感」を重視する人におすすめ


効果的な飲み方とブレンド例

  • バレリアン単独:就寝30分前に飲む。香りが強いため好みが分かれる。
  • カモミール+バレリアン:飲みやすさと安眠効果のバランスが良い。
  • ラベンダー+バレリアン:香りでリラックス効果を高めたい人におすすめ。
  • カモミール+ラベンダー:日常的なリラックスティーとして人気。

実際に市販されている「安眠ブレンドティー」には、この3種類が組み合わされていることが多く、相性の良さがうかがえます。


安全性と注意点

  • 強い眠気を引き起こす可能性があるため、運転や機械操作の前は避ける。
  • 睡眠薬や抗不安薬との併用は過鎮静のリスクがある。
  • 妊娠・授乳中の使用は安全性が未確立のため控える。
  • 数週間程度の短期使用が一般的で、長期利用は推奨されない。

まとめ

バレリアンハーブティーは「寝つきをサポートする自然な方法」として利用できますが、効果は人によって差があります。
飲みやすさやリラックス感を重視するならカモミールやラベンダーと組み合わせるのがおすすめです。
日常に取り入れやすいブレンドティーとして活用するのが実践的な使い方と言えるでしょう。


参考文献

  • Balderer G, Borbély AA. Effect of valerian on human sleep. Psychopharmacology. 1985.
  • Leathwood PD, Chauffard F. Aqueous extract of valerian root improves sleep quality in man. Pharmacol Biochem Behav. 1985.
  • Bent S, et al. Valerian for sleep: a systematic review and meta-analysis. Am J Med. 2006.
  • Miyasaka LS, et al. Valeriana officinalis in anxiety disorders: systematic review. Phytomedicine. 2006.
  • Zick SM, et al. Chamomile for generalized anxiety disorder: randomized clinical trial. J Clin Psychopharmacol. 2009.
  • Kasper S, et al. Silexan, an orally administered Lavandula oil preparation, in anxiety disorders. Int Clin Psychopharmacol. 2010.
  • European Medicines Agency (EMA). Community herbal monograph on Valeriana officinalis L., radix. 2016.

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