「イギリストースト」じゃなかったの? 幻のアメリカントーストにまつわる勘違いと記憶

暮らし

あのパン、実は「イギリストースト」じゃなかった

「イギリストーストって、昔は陸奥製菓が作ってたよね?」

私はつい最近まで、そんなふうに本気で思い込んでいました。
ところが調べてみたら、それは完全な勘違いだったのです。

小学生の記憶──社会科見学と甘いパン

その勘違いの始まりは、小学生時代の社会科見学でした。
私たちは地元・青森市にあった製菓会社、陸奥製菓の工場を訪れました。

見学のあと、おみやげとしていただいたのが、食パンにマーガリンと砂糖が塗られた甘いパン
それはふんわり柔らかくて、一口かじるとジャリジャリとした砂糖の食感が楽しく、口の中で溶けるように広がる砂糖の甘さと、マーガリンが絶妙にマッチしていて、子ども心にとてもおいしく感じたのを今でも覚えています。

記憶の中では、袋に星条旗のような配色と、自由の女神のイラストがあったような……
でもそのとき、商品名までははっきり覚えていませんでした。

成長してから知った「イギリストースト」

大人になってから再び青森に戻り、地元のスーパーで当たり前のように見かけたのが、工藤パンの「イギリストースト」

  • 食パン2枚にマーガリンとグラニュー糖
  • シンプルで甘くて、昔ながらの味

それを見た瞬間、私はこう思いました。

「あっ、これ……あのとき食べたパンだ!」

こうして、「イギリストースト=社会科見学で食べたパン」という記憶が、私の中で自然とつながってしまったのです。

思い違いに気づいた瞬間

最近になってある日ふと、「社会科見学で訪れたのは工藤パンではなく、陸奥製菓だったはず」と思い出しました。

そこで気になって「イギリストーストの歴史」を調べてみたところ、衝撃の事実にたどり着きました。

  • 「イギリストースト」は、1967年に工藤パンが独自開発した商品
  • 社会科見学先の陸奥製菓とはまったく別の会社
  • 陸奥製菓はその後倒産しており、企業としての記録も多く残っていない

工藤バンが今も存在することと、陸奥製菓が倒産したことはわかった。

では統合した?それとも商品だけ引き継いだ?

……じゃあ、あのとき食べたパンは何だったのか?

「アメリカントースト」という存在

答えは、ほとんど忘れ去られたイギリストーストだと私が思い込んでいたもの──

それは陸奥製菓の「アメリカントースト」

  • 構成はイギリストーストとそっくり:食パン+マーガリン+グラニュー糖
  • パッケージは星条旗カラーで、自由の女神が描かれていたという証言も複数
  • 名前も「イギリス」に対して「アメリカ」。対抗心のようなものすら感じます

つまり、小学校の社会科見学で食べたパンは、工藤パンの「イギリストースト」ではなく、陸奥製菓の「アメリカントースト」だった可能性が高いという結論にたどりつきました。

なぜ勘違いは起きたのか

陸奥製菓が姿を消し、アメリカントーストも市場から消えたあと、
似た構成の「イギリストースト」だけが今もなお売られ続けています。

情報の少ない時代、記憶の中でその2つが融合し、置き換わっていったのは無理もないことだったと思います。確認のしようのなかった記憶はそのまま定着してしまったようです。

今となっては、アメリカントーストの実物はもう存在しません
でも私の記憶の中には、あの甘くて優しいパンの味が、今もはっきりと残っています。

このような記憶のすり替えは、心理学的にも「誤情報効果」として知られています。つまり、後から得た似た情報によって、もともとの記憶が書き換えられてしまう現象です。

今回のケースでは、

  • 「イギリストースト」が現在も販売されていること
  • 商品の見た目や味が極めて似ていること
  • 陸奥製菓がすでに倒産していて、情報がほとんど残っていないこと

といった条件が重なり、自然と記憶が「イギリストースト」に上書きされてしまったのだと思われます。

イギリストーストは青森の誇るご当地パンに

一方で、イギリストーストは進化を続け、今や全国でも知られる青森名物になっています。

  • 小倉&マーガリン、いちごジャムホイップなど多彩なフレーバー
  • テレビや雑誌にもたびたび登場
  • SNSでは「青森土産」として紹介され、県外の人にもファンが多数

実際、私のラン仲間や県外の知人も「イギリストースト買ってきて!」と言ってくれるたり、お土産として何個も買いだめして帰ったり。それほど消費期限が長い商品ではないはずでしたが、どれほど食べるのでしょうね。
長距離を走ったあとにこの甘さは、たしかに沁みるのです。

記憶と味の境界線

現在の「イギリストースト」は青森の顔

「イギリストースト」だと思い込んでいたパンは、実は「アメリカントースト」だった。

今でも工藤パンのイギリストーストを食べるたびに、あのときの社会科見学のことを思い出します。

一方で、工藤パンが製造する「イギリストースト」は、青森を代表するご当地パンとして現在も広く親しまれています。発売から50年以上を迎えた今もなお、多彩なバリエーションが展開されており、県民に愛され続けている存在です。

  • 定番の「シュガーマーガリン」
  • 小倉マーガリン、いちごジャムホイップなどのスイーツ系

最近では観光客にも人気があり、お土産として購入する人も多く見られます。

ご当地パンの競争と淘汰の歴史

全国各地には、地元ならではの“ご当地パン”が数多く存在しています。たとえば、岩手県の「福田パン」や、沖縄の「ゼブラパン」などが挙げられます。これらは地域住民の記憶に根付き、今なお愛され続けている商品です。

しかしその一方で、時代の流れとともに姿を消していったパンも数多くあります。小規模な製パン会社が作っていたパンは、企業の統廃合や競争激化の中で淘汰されてしまい、記録すら残らないことも珍しくありません。「アメリカントースト」も、まさにそのような運命をたどったパンのひとつだったと考えられます。

 

📝まとめ

項目 内容
食べたパンの正体 陸奥製菓の「アメリカントースト」
記憶と混ざった商品 工藤パンの「イギリストースト」
なぜ混ざった? デザインや味の類似、情報の少なさ
現在の主力商品 工藤パン「イギリストースト」シリーズ
地域文化としての意義 地元の味としての象徴的存在

🍞あなたにとっての“思い出のパン”は?

このように、ひとつのパンから思い出される記憶や文化は、とても奥深いものです。あなたにも、忘れられない味や記憶に残るパンはありませんか?

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